部下育成で傾聴って言うけど、そもそも傾聴って何?
端的に言えば、相手の深層への「気付き」と「影響力」の2つになります。
「コーチングの最終目的と全体像を簡単に解説」で、コーチングはどんな目的でやるか、コーチングの全体像について解説しました。
今回は、コーチング手法の一つである傾聴について解説しますが、こちらの記事では…
- 部下育成をする上で、傾聴を理解したい人に向けて
- そもそも傾聴とは何か?
- どんな風に傾聴すれば良いのか?
- 傾聴の全体像について知りたい
上記の3点について解説します。
傾聴を学んでみると実行するのは非常に難しく、そもそも人に興味・関心が無ければ傾聴できない事が良く分かります。
傾聴の目的は?
傾聴はよく人の話を聴くという行為を指していますが、多くの場合、表面的な会話に終始しています。
- 人の話を聴く
- 相手が言った言葉にしか注意を向けていない
- コトに意識が向き、素早く解決しようと答えをアドバイスする
☞ 直線的な競争(誰よりも素早く)であり、ゴール(事を解決)を目指してしまう
- 職場では…
- 人は利益を出すための道具、歯車の一部になる
- 心から相手の話を聴くという事が欠如している
☞ そもそも相手の話を聴く心の余裕が無い
- 全員が自分の話をしてばかりで、誰も相手の話を聴いていない
傾聴は問題解決ではありません。傾聴は自分と相手の協働であり、相手が自主的に行動するための創造的な探究になります。
自分の「こうあるべき」を強いるのではなく、相手が「どうしたいのか」を見えるようにサポートする事です。
VUCAな時代と言われる現代では、組織にいる個々人のエンゲージメント、つまり深い関わり合いや関係性が重要度を増しています。
表面的な会話では、深い関わり合いや関係性になるはずがありません。
傾聴は、人同士の深い関わり合いや関係性を創る重要な行為になりますが、その中身は以下の2つになります。
- 気付き
- 影響力
気付き
気付きは、相手の話を聴いていて気付く事を指します。
具体的には、相手の言葉から深層の想いや感情を体で感じる事で、頭で考える事ではありません。
- 感覚
- 言葉
- 音
- イメージ
- 感情
- 熱意
- 情報
- 話し方の調子
- 音の高さ
- 声の抑揚
- 気付きで大事な事
- 双方でオープンマインドである
- 新しいことを受け入れる続ける事
影響力
気付きの段階で相手の深層の想いや感情を体で感じたら、それを自分の内に留めてしまうのは傾聴ではありません。
気付き、相手に影響を与えてこそ、傾聴の真価が発揮されます。
- 影響への意識、働きかけ
- 気付いたことを、相手に伝える
- 相手自身で気付いたことを、打ち明けてもらう
- 気付きの共有で、相手の行動にどんな影響を与えたか、意識を向ける
傾聴の全体像
これまでは傾聴の目的について解説してきました。ここからは、その傾聴の全体像について解説します。
基本的には以下の項目から成り立っています。
- 傾聴のレベル
- 傾聴のスキル
傾聴する3つのレベル
傾聴には3つのレベルがあり、それぞれ内容は以下のようになっています。
- レベル1:内的傾聴
- レベル2:集中的傾聴
- レベル3:全方位的傾聴
レベル1:内的傾聴
内的傾聴は意識が自分の内面に向いている、言わば偽りの傾聴で、相手に興味・関心を向けていない状態になります。
- 言葉は聴いているが、自分自身にとって何を意味するかに意識
- ベクトルが自分に向いている状態
- 一方通行のコミュニケーション
- 自分の「こうあるべき」に執着
- 「素早く問題を解決しよう」と頭で考えている
- 相手と共に創り出し、協働して解決する可能性を潰している
- 意識
- 自分の内面に向いている
- 考え、判断、気持ち、結論など、全ては自分
- 偽りの傾聴
レベル2:集中的傾聴
集中的傾聴は相手の言葉・内面に向いている、一般的に言われる傾聴の状態になります。
- 相手にしっかりと集中する聴き方
- お互いが相手に向かって身を乗り出している
- 聴く
- 相手の声の調子
- 抑揚
- ペース
- 滲み出る感情
- 見る
- クライアントの話を聴き取り、応答する
- 応答した時のクライアントの表情を見る
- 大事な事
- 集中的傾聴が意識的であること
- それに自分自身が気付いている事
レベル3:全方位的傾聴
全方位的集中は相手の言葉・内面だけでなく、空気感や環境など、自然に相手の心を感じ取る状態になります。
感受性が高く、他人と比較せず相手をそのまま受け入れ、5感で相手に意識を向けます。
コーチであっても、このレベルまで傾聴できる方はなかなかいません。
- 自分と相手だけでなく、360度全てに意識を当てる聴き方
- より直感が働く
- 応答はどのように受け取られたか
- それに対し何に気付いたか
- 環境的傾聴
- 部屋の温度
- 雰囲気
- 明るさ
- 比喩的
- クライアントのエネルギー
- 高揚
- 沈む
- 落ち着いている
- よそよそしい
- 熱狂
- 飛び立たんとする蝶
- 爪を立てる鷹
- 鼓舞するリーダー
- 傾聴に優れている
- 気付き、影響を与える
- 今起きた事に集中し、そこから共に創る能力
傾聴を支える5つのスキル
これまで3つの傾聴レベルを解説しましたが、ここからはその傾聴を支える5つのスキルを解説します。
- スキル1:反映
- スキル2:明確化
- スキル3:俯瞰
- スキル4:比喩
- スキル5:認知
スキル1:反映
- 起こっている事を明確にするスキル
- クライアントの葛藤
- 自分が何をしているのか
- 何を言っているのか
- 自分だけでははっきりわからなくなる
- 全体像が見えなくなる時
- 目の前の細かい事に執着している時
- 矛盾の指摘
- コーチとクライアント間で約束した行動
- 実際の行動との明らかな食い違いを曖昧にしない
- 真実の追求
- クライアントが行ったこと、行わなかったこと
- 総合するとどんな真実(深層)が浮かび上がってくるか
- クライアント自身が見えるようにサポートする
- 正しいかどうかにはこだわらない
- 代替案や異なる解釈も受け入れる心の余裕がある
- 矛盾の指摘と受け入れ、相矛盾するような2つの要素が同時にある
スキル2:明確化
- 傾聴を土台として、クライアントが物事をよりはっきりと見られるようにするスキル
- 質問、言い換え、視点を転換
- 漠然と抱いているイメージをより鮮明にする
- クライアントがはっきり言えるようになることが目的
- 細部を詰め、最終的にそれでいいかどうかを確かめたいとき
スキル3:俯瞰
- 物事の全体像を捉えるスキル
- クライアントの人生を上空3000メートルから眺めるイメージ
- 会話の詳細ではなく、客観的な観点から発言できる
- 異なる視点から物事を見るキッカケを与える
- 自分のビジョン、生き生きとした人生のイメージを思い出す
- ある特定の状況への対処にパターンがある
- これが俗に言う固定観念や執着
- クライアントの人生に繰り返し現れる苦しみ
- これを取っ払う事は自分にとって最大のチャレンジ
- 効果的な場面
- クライアントの意識が問題の細部に囚われているとき
- その問題の文脈や背景を明確にするとき
スキル4:比喩
- クライアントの体験をより速く容易に理解できるようサポートするスキル
- 感覚やイメージ
- 知性よりも情景に訴えかける方が効果的
- 使った比喩があまりピンと来なくても、別の比喩を試してみればよい
スキル5:認知
- クライアントに揺るぎない自信を与えるスキル
- その人がどんな人なのかに焦点を当てる
- クライアントの価値観と行動した勇気
- 内に秘めた強さを称える事
- クライアントに気付くきっかけを与える
- 卑屈になるあまり、見落としている事
- そもそも全く気付いていないこと
- 成長しつつある部分
- 強くなりつつある部分
- 2つの側面がある
- 認知をクライアントに伝えるという側面
- 認知がクライアントにどんな影響を与えたか気付くという側面
- 人は、相手から理解して貰えていると感じる事は滅多にない
- それゆえ、認知の力は極めて感動的な事
書籍紹介
最後に、記事を書くに当たり参考にした書籍を紹介します。
コーチング・バイブル -人の潜在力を引き出す協働的コミュニケーション-
まとめ
今回は、コーチング手段の一つである傾聴について解説しました。
今後も、コーチング手段の直感、好奇心、行動と学習、自己管理を解説していきます。
- コーチは傾聴する。そして、傾聴はコーチングの入り口
- 傾聴のレベル
- 内的傾聴
- 集中的傾聴
- 全方位的傾聴
- 傾聴のスキル
- 反映
- 明確化
- 俯瞰
- 比喩
- 認知
- クライアント
- クライアントのビジョン
- 価値観に沿って生きているか
- 今、どんなところにいるか
- クライアントの抵抗や乱気流を感じる
- 傾聴のレベル
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