半導体で出てくる薄膜ってどんな役割があるの?
これまで本ブログではフォトレジストやエッチングについて解説してきましたが、今回は薄膜について解説します。
薄膜も半導体では良く聞く言葉ですが、実際どんな用途で使われているのか情報を調べてみても、専門用語が多くて理解するのが難しいですよね。
本記事では、なるべく専門用語の羅列・長文は避けて表や図を使って用途を分類し、平易に解説していきます。
- この記事を読むことで、半導体における薄膜がざっくり分かります
- 薄膜とは何か?その目的は?
- 薄膜を作製する方法や材料について
薄膜の目的
薄膜とは文字通り薄い膜の事で、半導体の一つであるICチップ(集積回路)はバクテリアやウイルス(10~1000 nm)ほどの非常に薄い膜を重ねてできています。
ICチップの詳細はここでは割愛しますが、CPUやメモリに使われており、その中身は以下の表のように大きく3つの膜に分類されます。この3つの膜を何層も重ねる事でパソコンやスマホ、自動車などが機能している訳です。
IC(集積回路)の大まかな構造
半導体と呼ばれる所以は、このスイッチがONになっている時は電気を通しますが、OFFになっているときは電気を通さず、導体(電気を通す)と絶縁体(電気を通さない)の半々の機能を持っている事から半導体と呼ばれています。
薄膜の作製方法
薄膜作製方法
抜粋になりますが、現在、集積回路での薄膜の作製方法はCVD法とメッキ法が主に利用されています。
半導体プロセスの薄膜作製は通常気相成長法により作製しています。
気相成長
気相成長法は文字通り原料が気体として導入され、ウェハ上に薄膜を形成するもので、以下のメリットがあります。
- 精密に膜厚、膜質を制御できる
- ドライ環境で反応を制御できる
- 材料や雰囲気がクリーン環境で維持できる
- 大きな面積にも均一に成長できる
- 一つのロットで大量のウェハを処理できる
気相成長法には常圧・減圧CVD法、プラズマCVD法があり、それぞれ下記のような特徴があります。
CVD(chemical vapor deposition)
CVDはChemical Vapor Depositionの略で化学的気相成長法という化学反応を利用した薄膜作製方法です。
半導体膜や絶縁膜の作製にはCVD法が現在主に使われています。
薄膜を作製する順序としては以下のような単純な工程になります。
- 原料ガスを熱で分解
- シリコンウェハ上まで輸送
- シリコンウェハ上に薄膜を形成する
ホットウォールとコールドウォール方式
液相成長(メッキ法)
液相成長法は文字通り原料が液体として導入され、ウェハ上に薄膜を形成するもので、配線用の金属膜を形成する際に利用されています。
薄膜の原料
それぞれの膜の材料
薄膜には3つの種類がある事を上述しましたが、それぞれ薄膜に求められている材質が違い、原料も多岐に渡ります。上記の表は、数ある原料の中でも抜粋したものを記載しています。
シリコン膜の反応式
SiH4 → Si + 2H2
シリコン膜反応式
シリコン酸化膜の反応式
SiH4 + 2O2 → SiO2 + 2H2O
Si(OC2H5)4 → SiO2 + 4C2H4 + 2SiO2
シリコン酸化膜反応式
まとめ
今回は、半導体における薄膜の用途と製法・材料についてかなりざっくりと解説しました。
半導体一つを作るには様々な工程があり、調べても調べても専門用語が多く混乱する事がありますが、少しでも理解の助けになれば幸いです。
なお、それぞれの材料をどの企業が担っているのかは、『生産関連材料』のサイトが参考になります。
半導体化学メーカー全般を知りたい方は、下記の記事を参照ください。
- 薄膜の目的は半導体として機能させるための役割がある
- 薄膜には、半導体膜、金属膜、絶縁膜の3種類がある
- 薄膜を作製するには気相成長法と液相成長法の2種類がある
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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