P&IDって、何を記載しなければならないんだろう?
社内でルールが統一されてないし…。
社内でP&IDの書き方が統一されていないと後々トラブルになり、プラント建設ではダメ工事の嵐になります。
化学メーカーでプロセスエンジニアの方は、P&IDを読んで理解する&書くスキルは非常に重要です。
ここでP&IDの書き方がみんなバラバラで統一されたルールがないとトラブルの火種になるのですが、勉強しようにも参考書というものがありませんよね。
そこでこちらの記事では…
上記の内容を紹介します。
P&IDの書き方に正解は無く、各メーカーで多少違いが出るところです。しかし、今まで意識して来なかった方は、今回の内容を参考にしてみて下さい。
P&IDとはプロセスの根拠を把握するためにある
まず本題に入る前に、P&IDはどのような場面で必要なのか、大きな視点で見ていきましょう。
上記の通り、P&IDの作成が必要になるのは4番のプロセス設計になるのですが、ここに至るまでには1~3が決まらないと当然プロセス設計が出来ません。
要求スペックが無ければ、何を基準にプロセス設計すれば良いのか分からなくなります。
基準が決まればそれが根拠になりますので、プロセス設計をすることが出来ます。そして、P&IDを書くことは、プロセス設計部隊の役割。
しかし、P&IDの書き方が統一されていないと、どこに必要な情報が記載されているのか、分からなくなってしまいます。
最悪なのは、必要な情報が記載されていない事で、プラント建設工事になった時に想定外が発生、ダメ工事で費用がかさむ…、という事態です。
そういう事を起こさないためにも、P&IDに必要な情報を記載する事は非常に大切です。
P&IDの書き方を7つ紹介
まずは、P&IDに記載する情報は以下の7つになります。
それぞれ、どのような事か確認しましょう。
定常運転時の条件を記載する
- プラント内部の状態を知るために使われる代表的な変数(流量、温度、圧力 etc…)
- 上記の定常運転時条件をP&IDに記載する
- 変数の単位は、各会社の共通言語に合わせる
プラント内部の状態を知るために使われる変数ですが、これらはP&IDにも定常運転時の条件として記載し、そのプラントのスペックシートになり得ます。
流量は生産そのものに繋がり、温度・圧力は要求される流量のときに必要もしくは発生する条件になります。
流量、温度、圧力などの変数の単位は世代によって馴染みが変わりますが、その会社の共通言語となる単位に合わせる方が良いでしょう。
タンク、塔などの装置サイズを入れる&大小関係を守る
- 詳細は決まっていなくても、タンクや塔の大体の装置サイズを記載する
- このとき、絵の大小関係は守る
寸法をしっかり合わす必要はありませんが、装置の大小関係は守るようにしましょう。
作成したP&IDを利用して様々な場面で話が進められるので、大小関係がいい加減だと誤った認識をされてしまう恐れがあります。
タンク、機器に名称&基本情報を入れる
- タンクや機器にはそれぞれR-○○、TK-○○、P-○○、H-○○…といった機器名称を入れる
- 名称だけでなく、装置の基本情報を記載する
その名称の下部分に基本情報として、タンクであれば上記の直径と高さに加え容量を、ポンプであれば流量と揚程を入れましょう。
プラント設備の機械設計をする際にはこれらの条件が基本情報となり、さらに必要な情報を加えて形にしていきます。
測定器にはTAG No.&計装線を入れる
- 流量、温度、圧力を測定&制御に、測定器のTAG No.と制御させる計装線を入れる
- プロセス制御工学を学び、正しい制御・計装線になっているか確かめる
適当な計装線を組んでしまうと不安定な動きになりかねないため、プロセス制御工学を勉強する必要があります。もしくは、プロセス制御に詳しい先輩・上司または業者に聞くことも良いでしょう。
初心者がプロセス制御工学を学ぶなら、以下がおすすめです。
TAG No.の付け方やP&ID記号の書き方が分からない方は、こちらを参考にすると良いでしょう。
配管にはラインクラスを記載する
- 配管のラインクラス(材質・配管径)を記載する
- バルブはバルブタイプを記載する
このとき、配管の材質は流体に合ったものを、配管径は適切な流速域になるものを選択します。
特に危険物の第4類を扱う設備の場合は、制限流速1m/sec以下と決まっています。
それ以上の流速では静電気が発生し、最悪火災事故に発展してしまいます。配管と流速、扱う流体の関係は、必ずチェックしましょう。
配管設計について学びたい方は、下記の書籍がおすすめです。
図解が豊富で、バルブ・スチームトラップなど、プラントに欠かせない機器の記載もあります。
新設ラインを入れる場合:既設・新設が分かるように雲マークを入れる
- どこからが新設なのか分かりやすくするために雲マークを入れる
- 既設ラインとの配管取り合いも分かるように、きちんと明記する
既設のプラントから新設ラインを入れる場合、既設と新設の区別をはっきりさせましょう。
このとき大事なのは、既設と新設部分の配管の取り合い部分をうやむやにしない事です。後で自分や周りが困る事が目に見えているからです。
その時考えれば良いやと言って、短い配管距離の間で変にレデュースしている箇所などがあったりします。
見栄えも悪くなるので、P&ID作成の段階で取り合いを計画すべきでしょう。
ポンプサクションと水槽のNPSHを記載する
NPSHはNet Positive Suction Headの略称で、ポンプの吸い込みヘッドの事を指します。
詳細は割愛しますが、このNPSHに合わせてポンプもしくはタンクの高さ位置が決まります。
このとき、P&IDにNPSHを明記しておけば、後にプラント構築をする際にポンプの位置関係も織り込む事ができ、キャビテーションが発生するなどのトラブルも未然に防ぐ事ができます。
蒸留塔の指示構造物であるスカートも、NPSHを稼ぐために高さが計算されています。
まとめ
今回は、「プロセスエンジニア必須のスキルであるP&IDの書き方」をテーマに7つ紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか?
- 定常運転時の条件(流量、温度、圧力 etc…)を記載する
- タンク、機器などの装置サイズを入れる&大小関係を守る
- タンク、機器に名称&基本情報を入れる
- 測定器にはTAG No.&計装線を入れる
- 配管にはラインクラスを記載する
- 新設ラインを入れる場合、既設・新設が分かるように雲マークを入れる
- ポンプサクションと水槽のNPSHを記載する
多くの方には既に知っている内容だったかもしれません。
また、古い本ですが、P&IDの書き方の詳細を知りたい方は、下記の書籍を参照すると良いでしょう。
「これ以外にもこういう情報が必要ですよ」、というものがあれば、遠慮なくご教示いただければ幸いです。
なお、関連記事として、化学メーカー現場研修で自主的にどんなことがやれるのか知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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