EUVって何?
半導体絡みで目にするけど…。
半導体製造における、次世代の露光技術になります。
半導体絡みの記事でよく見かけるEUVというワードですが、Google等で検索すると企業の専門的な内容が出てきてちょっと分かりにくい…。
そこで、こちらの記事では…
- 専門的な内容が多いEUVの技術を、簡単に学ぶ事ができます
- そもそもEUVとは何か?
- EUV露光技術の登場で、従来のやり方と何が変わるのか?
- 今後の課題と展望について
上記の内容で解説していきます。フォトレジスト全般について知りたい方は、下記の記事を参照ください。
EUVとは何か?
光と波長、エネルギーの関係
EUV=Extreem Ultra Violet(極紫外線)
EUVとは上記に示す略称で、半導体製造の露光技術に使われる次世代の光源
これまでの露光技術では紫外領域の波長を利用していたのに対し、EUV露光では飛躍して極紫外領域の波長を利用することになります。
この技術の登場により、直接的には半導体の更なる微細加工が達成できます。
我々の生活で何が変わるの?
そもそも…
微細加工とかいきなり言われても…。
生活が何か変わるの?
このような疑問が、頭の中に浮かんだのではないでしょうか?
EUVという技術の登場により、我々の身近な生活がどのように変わるのか?、これを知りたいですよね。
具体的に何が変わるのかを、以下に記載します。
ざっと挙げるだけでも、これだけの恩恵が受けられます。
そして、上記を達成するためには、EUV露光技術が必要不可欠なのです。
これまでの光源との違い
光源とパターン寸法の歴史
半導体の集積回路の加工は、光(=波長)で削る事により行われます。
そして、波長が短くなるにつれてパターン寸法も細かくなっていきます。
このパターン寸法というのは、刃物の厚みに相当するものだとイメージして貰えれば、分かりやすいかもしれません。
この厚みが薄くなればなるほど、細かい部分を削り出し、より小さな構造を製作することが出来ます。
目的に応じて利用する光源は変わりますが、現在主流の光源がArFの波長193nm。
一方、EUVの波長は13.5nmで現行の10分の1以下と、飛躍的な短波長化が実現しつつあります。
光源の短波長化は微細加工、そして最終的な半導体性能向上に向けて欠かせないものです。
そのため、半導体の性能向上は、微細加工の歴史と言われています。
微細化が必要な理由
レイリーの式
$$R=k\frac{\lambda}{NA}$$
R:解像度=どれくらいの最小寸法を再現できるか
k:プロセス依存ファクター
\(\lambda\):露光波長
NA:レンズの口径
今や、昔より遥かに性能が良いパソコンが我々の手の中にありますが、これを達成するには集積回路の小型化が必要で、小型化するためにはより小さな構造を製作する必要があります。
この集積回路の小型化をするためには、上記のレイリー式で言う解像度を上げる必要があります。
身近な例で言えばテレビやデジタル写真の解像度で、細かければ細かいほど滑らかな映像や写真を映し出すことができます。
この解像度を上げて小さな構造を製作し、集積回路を小型化するためには、物理的には…
①露光波長を短波長化する事
②レンズの口径を大きくする事
この2つが挙げられます。
EUV技術は、①の露光波長を短波長化させることにより、レイリーの式にある解像度を上げる役割があります。
フォトレジストやEUV以前のフォトレジストの歴史について知りたい方は、下記を参照ください。
EUV露光技術で従来の方法と何が変わる?
- 露光装置
- マスク
- フォトレジスト
これまではEUVとはどういうものかについて説明してきましたが、ここではEUV露光技術が登場したことで従来の方法と何が変わるのかを説明します。
大きくは上記の3つになります。
露光装置
- 真空条件下での露光する必要がある
- 透過型レンズでの縮小光学系が使用できない
☞ ミラーを利用した縮小光学系を利用
現在主流の液浸法による露光技術
これまでの露光技術では、縮小レンズを通して微細化を行っていました。
しかし、EUVの大きな問題は、この波長域になると空気中の成分でさえEUVの光が吸収されてしまう事です。
つまり、これまで利用されていた光透過型の縮小レンズやクリーンな雰囲気環境下では、EUVの光がフォトレジストまで全く届かなくなってしまいます。
EUV露光の超簡易概念図
そのため、
①真空条件下で露光する事で、空気中の物質へのEUV光の吸収を防止
②ミラーによる縮小光学系で反射しながら使う事で、固体物質へのEUV光の吸収を防止
この2つの理由があります。
マスク
UVマスクとEUVマスクの比較
露光装置の項目で載せた絵のように、従来は光透過型のフォトマスクを利用していました。
光を通して欲しくない所はクロムで光を吸収し、ウェハ上にパターンを形成していました。
しかし、EUV光でこれまでのフォトマスクを使用すると、透過せずに吸収してしまいます。
そのため、フォトマスクもEUV光を反射できるように工夫しています。
反射している箇所が、ウェハ上でパターンを形成するように設計されています。
反射して欲しくない部分は吸収体を設けて、EUV光を吸収するようになっています。
フォトレジスト
- 多層レジストプロセスの採用
- ハードマスク法
- 2層レジスト法
- スズ原子をフォトレジストに導入
これまで説明してきたように、EUV光は物質による吸収が非常に強い領域です。
そのため、これまでのレジストでは、ウェハ上に塗布された厚みの途中までで全て吸収されてしまい、レジストの底部までEUV光が届きません。
そこで、特にEUV光の吸収が強いスズ原子を導入して、選択的に露光させるフォトレジストの開発がされています。
また、レジストプロセスにハードマスク法または2層レジスト法を採用する事で、レジストの底部までEUV光が届くように工夫しています。
下記の方法は、どちらもエッチング処理を2回行っています
多層レジストプロセス(左:ハードマスク法 右:2層レジスト法)
ハードマスク法
- シリコンウェハ上に、下地層➯ハードマスク➯EUVレジストの順で塗布
- EUVレジストを露光、現像
- ハードマスクをエッチング、回路パターンをハードマスクに転写
- 最後に、残ったハードマスク除去と下地層エッチングを行う
2層レジスト法
- シリコンウェハ上に、下地層➯下層レジスト➯EUVレジストの順で塗布
- EUVレジストを露光、現像
- 下層レジストをエッチング、回路パターン部分はEUVレジストにより保護
☞下層レジストのエッチング耐性を持たせるために、EUVレジストにSiを含有 - 最後に、残った下層レジストと下地層エッチングを行う
今後の課題
EUV露光技術で従来の方法と何が変わるのかを説明しましたが、それ以外にもEUV露光の元となる光源の課題があります。
光源
光源の出力とスループット
ミラー1枚のEUV光の反射率は、理論上68%が限界。
EUV露光装置には現在、ウェハ上までに11枚のミラーが組み込まれている。
EUV光源直近を100%とすると、ウェハに到達できるEUV光は…
\(0.68^{11}=0.0143\)(1.4%)
参考資料:実用化に向かう極端紫外リソグラフィー
マスクやフォトレジスト以外にも、光源の高出力化が課題となっています。
上記に示すように、ウェハ上に到達できるEUV光は元の1.4%しかありません。
実用的スループットが、1時間当たり100ウェハ以上(>100 Wafer Per Hour)の生産能力とされています。
現在は直径300mmのシリコンウェハが主流ですので、上記を達成しようとすると250W(=J/s)以上の高出力光源が必要だと言われています。
一方で、世界の技術者の努力により、その課題は解決しつつあります。
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まとめ
今回はEUV露光技術に関して解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
上記の内容をまとめると…
EUVとは何か?
- 半導体製造の露光技術に使われる、次世代の光源
- 我々の生活を大きく変える影の技術
EUV露光技術で従来の方法と何が変わる?
- EUV光は短波長で高エネルギーであるため、ほとんどの物質に吸収される
- 露光装置、マスク、フォトレジストが抜本的に変わる
今後の課題
- 生産能力を左右する光源は、実用化に至るには250W以上必要
- 世界の技術者の懸命な開発により、その課題は解決しつつある
半導体化学メーカー全般を知りたい方は、下記の記事を参照ください。
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