フッ素樹脂素材ってどういうものがあるんだろう?
何か種類も色々あるみたいだし…。
フッ素樹脂素材は半導体を製造する上でなくてはならない素材です。
それは、半導体向け化学薬品を製造しているメーカーも同様になります。
そこで、こちらの記事では…
- フッ素樹脂について知りたい方に向けて
- フッ素樹脂素材とは?
- フッ素樹脂の成型方法について
- フッ素樹脂の種類とメーカーまとめ
上記の内容を解説します。
フッ素樹脂素材とは?
フッ素樹脂素材の合成方法
フッ素樹脂素材とはどういうものかと言うと、フッ素を含む高分子化合物(ポリオレフィン樹脂)を指します。
記事の冒頭画像にもある蛍石が原料になります。
簡単な合成法を下記に示すと…
- 蛍石(CaF2)に硫酸(H2SO4)を反応させてフッ酸(HF)を得る
- フッ酸(HF)とクロロホルム(CHCl3)を反応させ
クロロジフルオロメタン(HCF2Cl)を得る - クロロジフルオロメタン(HCF2Cl)を熱分解すると
フッ素樹脂の原料(フルオロカーボンモノマー:C2F4)ができる - フッ素樹脂の原料を重合させることによってフッ素樹脂(PTFE)が完成
上記のような合成方法になります。
フッ素樹脂素材の特徴
また、上記の特徴から、一般的にはフライパンや車のコーティングに使われますが、半導体化学業界では不純物溶出を防ぐ目的などで使われています。
実験器具にも実プラントにも、至る所でフッ素樹脂素材を使っています。
このフッ素樹脂素材の需要が少なくなってくると、半導体需要も少なくなってくると言えますね。
そのため、フッ素樹脂素材が半導体業界の景気の先行指標になります。
国内のフッ素樹脂素材メーカー
また、国内のフッ素樹脂素材のパウダーメーカーは上記が有名です。
フッ素樹脂素材のサプライチェーンは上記のパウダーメーカーから始まり、次に成型メーカーで加工され、ユーザーへ供給されます。
ちなみに、テフロン®はデュポン社の商標になります。
なので、全てのフッ素樹脂素材がテフロン®という訳ではありません。
フッ素樹脂の成形方法
上記の画像は、PFAのような溶融成形ができるフッ素樹脂素材を射出成形する際に使う機械になります。この機器の金型部分に溶融させたフッ素樹脂を流し込んだ後、冷却させることで成形したフッ素樹脂素材の部品が得られます。
そのため、世の中に既製品として販売されているフッ素樹脂素材の部品は、この金型の形に合わせて作られています。
金型に使っている材質の種類と特徴
種類 | 成分 | 特徴 | 商標 |
---|---|---|---|
ステンレス鋼 | 下記内部リンク参照 | – | – |
ハステロイ C276® | 57Ni–17Mo–16Cr-5Fe-4W | 酸化・還元性の双方に優れた耐食性 孔食、すきま腐食に非常に強い 化学プラントでの使用実績がある | HAYNES international |
インコネル625® | 61Ni–9Mo–22Cr-3.5Nb-2Fe | ハステロイC276と同様優れた耐食性 腐食が厳しい環境で選択される | SPECIAL METALS |
金型はSUSなどのステンレス鋼や、高耐食性のあるハステロイ、インコネルなどを使っています。
ハステロイやインコネルはニッケルが主体で、モリブデンやクロムの含有量を多くしているため、耐食性がステンレス鋼よりもさらに上がっています。
フッ素素材の種類とメーカーまとめ
- フッ素樹脂素材
- フッ素ゴム素材
フッ素ゴムはOリング等に用いられており樹脂とは別物になりますが、半導体業界ではフッ素樹脂と並び欠かせない素材になりますので、こちらも紹介します。
フッ素樹脂素材の種類と特徴
各フッ素樹脂素材の種類と特徴は以下になります。
名称 | 略称 | 特徴 | 商標 |
---|---|---|---|
ポリテトラフルオロエチレン | PTFE | 代表的なフッ素樹脂素材 工業用としての用途が多い 熱溶融しないため、切削加工する | テフロン(デュポン) ポリフロン(ダイセル) フルオン(旭硝子) |
パーフルオロアルコキシアルカン | PFA | PTFEと同等の性能を持つ 溶融加工が可能 | テフロン(デュポン) ネオフロン(ダイセル) フルオン(旭硝子) |
エチレン-テトラフルオロエチレン | ETFE | PTFE、PFAに比べ低コスト 耐熱性、耐薬品性が少し劣る | テフゼル(デュポン) ネオフロン(ダイセル) フルオン(旭硝子) |
ポリクロロトリフルオロエチレン | PCTFE | 透明性が要求される場面で使用 PTFEに比べ耐薬品性がやや劣る | ネオフロン(ダイセル) |
パーフルオロエチレン-プロペン | FEP | 溶融加工が可能 PTFEにある室温転移点がない PTFE、PFAに比べ耐熱性が劣る | テフロン(デュポン) ネオフロン(ダイセル) |
他にも、PVDF、ECTFEというフッ素樹脂素材があります。
自分が求めている環境に合わせて、フッ素樹脂を選定します。
商標は同じなのですが中身が違うので、それぞれどのような特徴を持っているのか、一覧で押さえておくと良いです。
フッ素ゴムOリングの種類と特徴
半導体化学メーカーでOリングを使用する場合は、フッ素ゴム素材である高機能Oリングが必要になります。その主な特徴と種類を以下に示します。
名称 | 略称 | 特徴 | 商標 |
---|---|---|---|
フッ化ビニリデン系ゴム | FKM | フッ素ゴム材の中で代表的な材質 耐極性溶剤性に劣る | バイトン(ケマーズ) ダイエル(ダイキン) ダイニオン(3M) |
四フッ化エチレン-パーフルオロ メチルビニルエーテルゴム | FFKM | 耐熱性、耐薬品性が極めて高い 耐寒性に劣る 高価 | カルレッツ(デュポン) ダイエル パーフロ(ダイキン) |
四フッ化エチレン-プロピレンゴム | FEPM | 耐薬品性(強酸・強アルカリ) 耐アミン性がFKMより優れる 電気絶縁性が高い 誘電率が低い 耐極性・耐エーテル溶剤性に劣る | アフラス(旭硝子) |
パーフルオロポリエーテルゴム | FFKO | 硬化前が液状 低温性 接着性(SIFEL2000) | サイフェル(信越化学) |
表を見ると、フッ素樹脂に強いメーカーが
フッ素ゴム領域にも力を入れている事が分かりますね。
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まとめ
今回は、半導体業界でよく使われるフッ素樹脂の種類とメーカーについて解説しましたが、いかがでしたでしょうか?
上記の内容をまとめると…
- フッ素素材の原料は蛍石である
- フッ素樹脂、フッ素ゴム共に使用環境に応じて多くの種類がある
- ただし、メーカーはフッ素素材のシェアが高い企業に集約される
数多くのフッ素素材の種類や特徴、メーカーについて、少しでも理解できれば幸いです。
半導体化学メーカー全般を知りたい方は、下記の記事を参照ください。
半導体化学業界で使われるSUSなどの材質について知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
最後までご覧いただき、ありがとうございました!
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